退職金は、“狙われる”お金だと言われます。まとまった大金が入るタイミングを、金融機関はよく知っている。退職金を受け取った途端、銀行や証券会社から「特別プラン」の案内が届いたり、電話がかかってきたり——そんな話を、よく聞きます。
ところが、私のところには、勧誘の電話も、甘い話も、一件も来ませんでした。偶然ではありません。先回りして、営業が入り込む“隙”を、自分で消しておいたからです。今日は、その具体的な方法と、退職金を実際にどう扱ったかを、正直にお話しします。
まず、受け取り方は「一時金」にした
退職金の受け取り方には、「一時金」(まとめて一括)と「年金形式」(分割)があります。私は、一時金を選びました。
理由は、税金です。退職金には「退職所得控除」という大きな控除があって、勤続年数が長いほど、税金がかかりにくくなります。私は長く同じ会社に勤めたので、控除の枠が大きく、一時金で受け取っても、ほとんど税金がかかりませんでした。(※控除額や、有利な受け取り方は、勤続年数や一人ひとりの状況で変わります。ご自身のケースは、会社や税務署に確認してください。)
どのくらい控除されるのか、具体的に見てみましょう。退職所得控除額は、勤続20年を境に、計算式が変わります。
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(20年なら、満額の800万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
ポイントは、20年を超えると、1年あたりの控除額が40万円から70万円へと、2倍に増えること。長く勤めた人ほど、ぐっと有利になります。
私の場合、勤続年数は39年でした。計算すると、800万円 + 70万円 ×(39 − 20年)= 2,130万円。これだけ大きな控除の枠があるので、一時金で受け取っても、税金はごくわずかで済んだのです。だから私は、迷わず一時金を選びました。(※実際の課税では、控除したあとに、さらに2分の1をかけるなどの決まりがあります。正確な計算は、国税庁のサイトや税務署で確認してください。)
勧誘が来なかった、本当の理由
ここが、今日いちばん伝えたいところです。退職金の勧誘が来なかったのは、運が良かったからではありません。営業の「入り口」を、先回りで塞いでおいたからです。
① 固定電話は、数年前に解約していた
そもそも我が家の固定電話は、数年前に解約しました。理由は単純で、固定電話には、もう営業電話しかかかってこなくなったからです。用事のある相手は、みんなスマホに連絡してきます。だったら、営業電話の入り口でしかない固定電話は、いらない。解約してしまえば、そこからの勧誘は、ゼロになります。
② 退職の1か月前に、使っていない口座とカードを整理した
そして退職の約1か月前、使っていない銀行口座・証券口座・クレジットカードを、整理して解約しました。長年のうちに、いつのまにか増えていたものです。使っていない口座やカードは、案内やDMの送り先になるだけ。退職金が入る前に、身辺をすっきりさせておいたのです。
おかげで、退職金を受け取っても、勧誘の類は一切ありませんでした。唯一届いたのは、SBI証券に大きな金額を入金したときの「ご入金ありがとうございます」という自動メールくらい。拍子抜けするほど、静かなものでした。(使わない口座やカードを絞ることは、詐欺対策にもなります。こちらの記事にも書いています。)
そもそも、考えてみてください。超富裕層でもない、私たち一般人のところに、本当に有利な“特別な話”が舞い込むはずがありません。退職金を狙って来る「特別プラン」の多くは、手数料の高いぼったくり商品です。詐欺とまでは言いませんが、私たちにとっては、付き合うだけ、時間の無駄。だから、そもそもの入り口を塞いでおくくらいで、ちょうどいいのです。
退職金は、どうしたか
では、受け取った退職金を、実際にどうしたか。
まず前提として、住宅ローンは、すでに完済していました。だから、「ローンの返済に充てるか、運用に回すか」で悩む必要は、ありませんでした。
私がしたことは、シンプルです。自分ルールに従って、半分ほどを投資に組み入れ、残りは手元に置いておく。それだけです。私は投資を20年以上続けてきて、自分なりの方針が決まっています(その話はこちらの記事に書いています)。退職金だからといって、特別なことはしない。いつもの方針の中に、静かに組み込んだだけです。
大金が入ったからと、一気に増やそうと欲を出さない。かといって、怖がって全部を預金で寝かせておくのも、私の性には合わない。だから「半分」。自分が、夜ぐっすり眠れる配分にしました。
正直、大金を前にすると、そわそわする
最後に、本音を一つ。
「退職金は特別なお金ではない、いつも通りに扱っただけ」——そう書いてきましたが、正直に言えば、まったく動じなかった、と言えばウソになります。なにしろ、入金額が大きい。口座の残高を見て、そわそわしなかったと言えば、嘘になります。
でも、大事なのは、その「気の迷い」に、判断をゆだねないことだと思っています。金額の大きさに気持ちが浮ついても、行動は、あらかじめ決めておいた自分ルールに従う。感情ではなく、ルールで動く。20年、投資を続けてきて、いちばん効いているのは、この一点かもしれません。
まとめ:退職金は、増やす前に「守る」
退職金でいちばん大事なのは、増やすことより、まず「守る」ことだと思います。
- 甘い話は、先回りで入り口を塞ぐ(固定電話や、使わない口座・カードを整理する)
- 受け取り方は、税金を確認して(多くの場合、一時金が有利)
- あとは、感情ではなく、自分ルールで淡々と
まとまったお金を前にすると、誰でも心が揺れます。だからこそ、揺れる前に、守りの準備をしておく。それが、退職金と上手に付き合うコツだと、私は思います。
(※お金の運用に「絶対」はありません。ここに書いたのは、あくまで私のやり方です。ご自身の判断は、無理のない範囲で。)
今日が人生で一番若い日です。ぜひ、今日から一歩踏み出しましょう。


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