「定年後も、働いたほうがいいのだろうか」
60歳が近づくと、多くの人が悩みます。私も、悩みました。
結論から言うと、私は再雇用を選び、そして1年半で辞めました。
正直な感想はこうです。「もっと早く辞めればよかった」。
今日は、なぜそう思ったのか。1年半、何を感じていたのか。そして、辞めた今どうなのかを、正直にお話しします。
再雇用の毎日は、こうでした
私は1963年生まれ。2023年の暮れに60歳の定年を迎え、そのまま同じ会社に再雇用として残りました。IT企業です。
働き方は、こんな感じでした。
朝、課の全体朝礼。そのあと、チームのミーティングで、その日の業務をチェックリストで確認する。定型業務は、新人がやります。私の役割は、その確認と、トラブルが起きたときの対応。
……ただ、トラブルは、めったに起きないんです。
だから、暇でした。本当に、暇でした。
年収は、現役時代の約半分になりました。でも、うちの会社は昔からそういうものなので、「まあ、そんなものかな」と受け止めていました。お金より、この「暇」のほうが、こたえました。
一度だけ、私にしかできない仕事が来た
その1年半で、たった一度だけ、私の出番がありました。
あるプログラムに、不具合が出たんです。調べてみると、それは50年以上前に、アセンブラ(コンピューターに近い、古いプログラミング言語)で書かれたプログラムでした。書いた人は、もう亡くなっています。
私は、若い頃にアセンブラを少しかじっていました。だから、原因を追えました。
原因は、コンペア(比較)命令の種類の間違いでした。50年間、一度も表面化しなかった間違いが、あるとき条件が揃って、初めて牙をむいた。そういうものでした。
直すことはできました。でも、私はこう思ったんです。「私がいなくなったら、これはもう誰も直せない」。
だから、直すだけで終わりにしませんでした。
「Hello, World!」——ただ画面に文字を出すだけの、いちばん簡単なプログラム。それを題材にした手順書を作りました。プログラムの直し方、アセンブルのやり方、実行のしかた。全部を書いて、チームの若い人たちに教えました。
50年前の技術を、次の世代へ手渡す。これが、私の最後の仕事になりました。
……そして、それが終わると、また暇な日々に戻ったのです。
辞める決心をさせたのは、一人の後輩でした
きっかけは、私の1つ後輩でした。
彼は、60歳で辞めて、再雇用もしませんでした。すっぱりと会社を去った。
それを見て、私は考えたんです。
お金を稼ぐことより、60代の時間のほうが、ずっと大事なんじゃないか。
60代の、体が元気に動く時間。それは、あとどれくらい残っているんだろう。会社の椅子に座って、暇を持て余しているうちに、その貴重な時間が過ぎていく——そう思ったら、答えは出ていました。
辞めました。そして辞めてすぐ、その後輩と2人で、北海道へ旅行に行きました。
お金の不安は、ありませんでした
辞めることに、お金の不安はありませんでした。
若い頃から続けてきた株の資産で、生活のめどは立っていたからです(その話は別の記事に書きました)。無理に働く必要は、もうなかったんです。
心配がなかったわけではありません。認知症の母のこと、そして家族のこと。気がかりは、あります。でも、それは働いていても、なくなるものではありません。
辞めて、良かったこと・惜しかったこと
正直に、両方書きます。
良かったこと。平日に、自由な時間が持てるようになりました。好きなことができます。このブログも、その一つです。
惜しかったこと。会社に通っていた頃は、いやでも規則正しい生活になっていました。今は自由なので、ときどき、だらだらと過ごしてしまう日があります。そこは、少し反省しています。
それと、これは笑い話ですが——新幹線の定期券がなくなったのは、もったいなかった。あれで、ずいぶん安く出かけていたので。
同世代の方へ、伝えたいこと
再雇用を続けるか、辞めるか。迷っている同世代の方へ、私が一番伝えたいことは、これです。
人生は、思っているより短い。
60代の、元気なうちに、好きなことをやるべきです。65歳までの時間は、特に貴重です。体が動いて、気力もあって、でもまだ「若い」と言える。そんな時期は、そう長くは続きません。
もちろん、働き続けるのが悪いわけではありません。やりがいを感じられるなら、収入が必要なら、続ければいい。大事なのは、「なんとなく」で続けないことだと思います。
私は「なんとなく」再雇用を続けて、1年半、暇を持て余しました。だから言うんです。
もっと早く、辞めればよかった、と。
今日が人生で一番若い日です。ぜひ、今日から一歩踏み出しましょう。
免責事項
本記事は筆者個人の体験・見解に基づくものであり、税務・社会保険・年金等に関する専門的なアドバイスではありません。在職老齢年金や社会保険の扱いは、収入・年度・制度改正により異なります。実際の判断は、必ず年金事務所・社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご確認ください。


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