「年金は、繰り下げたほうがお得ですよ」——ネットや雑誌で、よく見かける話です。70歳まで待てば、受け取る額が42%も増える。数字だけ見れば、確かにそのとおりです。
でも私は、年金を65歳から、予定どおり受け取ることに決めています。繰り下げは、しません。計算ができないから、ではありません。むしろ、計算できるからこそ、そう決めました。今日は、その本音を正直にお話しします。
繰り下げは「利回りが確定した投資」。それでも、しない
私は長くコンピューターの仕事をしてきて、数字の計算は嫌いではありません。繰り下げ受給の損益分岐点——70歳まで待つなら、だいたい82〜84歳まで生きれば元が取れる、といった計算も、自分でできます。
その目で見れば、繰り下げは、いわば「利回りが確定した投資」です。増える率が、国によって最初から保証されている。投資家の感覚で言えば、こんなに有利な話は、そうそうありません。やらない手はない——理屈では、そうなります。
でも、その計算には、どうしても組み込めないリスクが一つあります。それは、「自分が、いつ死ぬか分からない」ということ。
どんなに有利な利回りでも、受け取る前に自分がいなくなってしまえば、意味がありません。長年、給料から天引きされ続けてきた年金です。繰り下げている間に、もし自分が先に逝ってしまったら——一度も受け取らないまま、終わってしまう。それが、なんだかイヤなのです。
……自分の寿命なんて、正直、分かりたくもありませんが。分からないからこそ、私は「元気なうちに、自分の手で受け取る」ほうを選びました。理屈ではなく、気持ちの問題です。
そもそも、無理に増やす必要がない
もう一つ、理由があります。私は、年金を増やさなくても、暮らしの見通しが立っているのです。
現役時代から続けている株の配当収入や、これまでに築いた資産があるので、当面、年金がなくても生活費の心配はありません(お金の話はこちらの記事に書いています)。
繰り下げてでも将来の受給額を増やしたい、というのは、年金が老後の「柱」になる人の考え方だと思います。私の場合、年金は柱ではなく、あくまで「上乗せ」。だから、生活を切り詰めてまで我慢して増やす動機が、そもそもないのです。
(念のため。これは、あくまで私の状況での判断です。年金が暮らしの中心になる方にとっては、繰り下げの価値が大きい場合もあります。ここは、人によって答えが変わるところです。)
妻も65歳から。加給年金は、我が家は対象外でした
妻も現役で働いていて、こちらも65歳から受け取る予定です。
夫婦だと「加給年金」——配偶者がいるともらえる上乗せ——が気になるところですが、調べてみると、我が家は条件を満たさず、対象外でした。加給年金は条件が細かく、家庭によって変わります。ご自身のケースは、年金事務所で確認するのが確実です。
「自分はいくらもらえるのか」は、スマホですぐ分かる
繰り下げるかどうかを考える前に、いちばん大事なことがあります。それは、「自分は結局いくらもらえるのか」を、正確に知っておくことです。
これは、スマホ一つで確認できます。しかも私の場合、マイナンバーカードすら、スマホの中に入れてあります。だから、カードを取り出す必要すらありません。マイナポータル経由で「ねんきんネット」にログインすれば、これまでの年金の記録も、これからの見込み額も、いつでも手のひらで確認できます(マイナンバーカードの話はこの記事に書いています)。
実際に自分の見込み額を見てみると、判断が、地に足のついたものになります。ネットの一般論や、平均額の話ではなく、まず「自分の実際の数字」。そこから考えるのが、遠回りのようで、いちばん確実です。
周りは、みんな65歳から
面白いもので、同級生や飲み仲間と年金の話になっても、「繰り下げる」という人は、一人もいません。みんな、判で押したように65歳からです。
「お得」と言われる繰り下げが、現実にはほとんど選ばれていない。それだけ、「元気なうちに受け取りたい」という気持ちは、多くの人に共通しているのだと思います。数字の損得だけでは割り切れない何かが、年金にはあるのでしょう。
まとめ:損得より、自分の納得で
繰り下げが、数字のうえでお得なのは本当です。それでも、年金をいつから受け取るかは、損得だけで決める話ではない——私は、そう思っています。
「利回りは確定していても、自分の寿命は分からない」「増やす必要がない」「周りもそうしている」。私の場合は、この納得で、65歳を選びました。
大事なのは、まずねんきんネットで、自分の見込み額を知ること。そのうえで、あなた自身が納得できる時期を選べばいいのだと思います。正解は、人の数だけあります。
迷ったら、年金事務所は無料で相談に乗ってくれます。一人で抱え込まず、プロに聞くのがいちばんです。
今日が人生で一番若い日です。ぜひ、今日から一歩踏み出しましょう。


コメント