前の記事で、ドライブレコーダーに10年ぶん残った映像のことを書きました。ネコ、キジ、猿、そして1年生。事故でも危険でもない映像ばかりでした。
今回は、残りのほうです。「危ない」と名前を付けて残した、13本の話をします。
先に申し上げておくと、この記事に映像は一枚も載せません。代わりに、その映像を見ながら描き起こした絵を使っています。理由は最後に書きます。
押さなければ、消えていた映像です
最初に付けたドライブレコーダーには、保存ボタンが付いていました。
走っている間、映像は上書きされ続けます。放っておけば、古いものから順に消えていく。「これは残しておきたい」と思ったら、その場でボタンを押す。押したものだけが、上書きされずに残ります。
押した回数は、数えていません。覚えてもいません。ただ、そうやって残った映像が28本あります。
つまり、残っている映像は、勝手に残ったものではありません。運転しながら手を伸ばして、押したものばかりです。あとで見返すつもりで、押していました。
この保存ボタンが付いていたのは、最初に買った2万円ほどのドライブレコーダーです。2022年12月に車を買い替えて、今はメーカー純正のものになりました。この記事に出てくる映像は、すべてその前のもの——あのボタンを押して残したものです。
前の記事はこちらです。 → 【ドラレコ10年】いちばん見返したのは、事故ではなく2人の1年生でした
「危ない」13本のうち、6本は私の話ではありませんでした
28本のうち、危ない場面は13本ありました。
数え直してみて、自分でも意外だったことがあります。13本のうち6本は、私が当事者ではありませんでした。
前を走っていた車が、完全な赤信号でそのまま行った。右折車が信号を無視して曲がっていった。歩道に乗り上げた車が、レッカー車で吊り上げられていた。追突。正面衝突。逆走。
どれも、通りがかりに映っていただけです。私は関係ありません。
これらについては、この記事で中身を書きません。日付も、場所も書きません。事故に遭った人にとっては、10年経っても終わっていない出来事です。たとえ相手に非があっても、それを人に見せるのは私のやることではない。前の記事に書いたことと、同じです。
残った7本
私自身が関わったのは、7本でした。
そのうち2本——強風で飛んできた看板と、ネズミ捕りの現場——は、前の記事に書きました。ここでは残りの5本を書きます。
正面から来た車が、私の直前で急ハンドルを切った
ラジコン飛行機の飛行場からの、帰り道でした。
正面から来た車が、猛スピードで自転車を追い越しにかかりました。こちらの車線にはみ出してきて、私の目の前で急ハンドルを切って、戻っていきました。
ぶつからずに済んだのは、私が速度を落としたからです。

交差点で、左から来た車がショートカットして曲がってきた
私が左折しようとしていた、田舎の交差点でした。信号もセンターラインもなく、角が丸く広がっている、見通しのいい道です。
左から来た車が右折してきたのですが、交差点の内側をショートカットして、私の鼻先へ切り込んできたのです。
私が停止したので、直前で避けることができました。

バイパスを、レトロカーが逆走してきた
交差点を左折して、片側2車線のバイパスに入ったところでした。
前方から、車がゆっくり走ってきます。逆走です。しかも、赤い旧車でした。
このときは、慌てずに避けられました。どちらもゆっくり走っていたからです。相手も、私も。
左から、私を見ないまま交差点に入ってきた車
車のディーラーからの、帰り道でした。
交差点で、左から来た車が、私の車を見ないまま進入してきました。
避けられたのは、対向車線の車が右折待ちで止まっていたからです。そちらへよけても、ぶつかる相手がいませんでした。
左から入ってこられたので、私は右へハンドルを切りました。
このときの映像には、三つの動きがそのまま残っています。相手が交差点で寄ってくるところ。私が右へ切って、右折待ちで止まっていた対向車が真正面に来るところ。そして、その先で停止したところ。
いま見返しても、あのときのままドキドキします。四年前のことなのに、変わりません。
山道で、トラックの前を動物が横切った
これだけは、少し違います。私の身に起きたことではありません。
飛行場からの帰りの山道で、前を走っていたトラックの前を、動物が素早く横切りました。
思わず、保存ボタンを押しました。
並べてみて、気づいたこと
5本を並べてみると、同じことが書いてありました。
- 速度を落としたから、ぶつからなかった
- 停止したから、避けられた
- どちらもゆっくりだったから、慌てずに済んだ
- よける先が空いていたから、よけられた
相手が突っ込んでくるのは、こちらでは止められません。逆走してくる車も、信号を見ていない車も、私にはどうしようもない。
変えられるのは、こちらの速度だけです。そして7本のうち5本は、それで足りていました。
ただし、最後の1本は違います。左から入ってきた車を避けられたのは、たまたま対向車線が右折待ちで止まっていたからでした。よける先が空いていた。これは運です。
45年、一度もぶつけたことがありません
運転を始めてから45年になりますが、自分からぶつけたことは、一度もありません。
正確に言えば、停止中に相手からぶつけられたことはあります。こちらは止まっているのですから、避けようがありません。相手は変えられないというのは、そういうことです。
反射的に避けたのは、事実です。普通に走っていた人なら、たぶんぶつかっていたと思います。
ただ、反射だけで説明がつくとも思えません。ぶつかりそうになってから避けているのではなく、その前の段階で、怪しい車に気づいている。事前の認識と、状況の判断。そこが効いているのではないか、と思うのです。
では、具体的に何を見ているのか。そう聞かれると、うまく答えられません。
雰囲気というか、空気感というか。具体的には分かりませんが、感じるのです。
長くやってきたことほど、言葉にするのは難しいものだと思います。
それでも、渡せるものが一つあります
空気感は、人に渡せません。私にも説明できないのですから、渡しようがない。
でも、7本の映像が示していたものは、はっきりしています。速度です。
速度なら、誰にでも真似ができます。しかも、今日からできます。
相手の運転は変えられません。逆走してくる車も、こちらを見ていない車も、なくなりはしない。それでも、こちらが遅ければ、当たらずに済むことがある。私の10年ぶんの映像は、そう言っています。
映像を載せない理由
この記事に、映像は一枚も載せていません。載せたのは、その映像を見ながら描き起こした絵です。
危ない13本には、必ず相手がいます。ナンバーが写り、車種が分かり、場所も分かる。相手に非がある場面ほど、人に見せたくなるものですが、それは「晒す」ということです。
そこで、絵にしました。道の形も、まわりの景色も、映像のとおりです。ただ、細かいところは実物と違います。車種は変わってしまいましたし、自転車の向きも逆になりました。
それでも、かまわないと考えました。お伝えしたいのは、どんな車だったかではなく、どんな場面だったかですから。
ドライブレコーダーは、人に見せるために付けるものではありません。何かあったときに、自分を守るためのものです。
まとめ
- 最初のドラレコには保存ボタンがあり、押した映像だけが残る。10年で28回押した
- 「危ない」と名前を付けたのは13本。うち6本は通りがかりに映っただけで、私は無関係
- 自分が関わった7本は、ほぼすべて「速度を落としていた」「止まっていた」から助かった
- 1本だけは、よける先が空いていた運もあった
- 45年ぶつけていない理由を聞かれても、うまく答えられない。空気感としか言えない
- 空気感は渡せないが、速度なら誰にでも真似できる
相手は変えられません。変えられるのは、自分の速度だけです。
今日が人生で一番若い日です。ぜひ、今日から一歩踏み出しましょう。


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