ドライブレコーダーを付けたのは、「事故の状況が残ったら、いいな」——そのくらいの、軽い気持ちからでした。
もらい事故に備えて、とか、あおり運転が怖くて、といった、はっきりした理由があったわけではありません。なんとなく、あったほうがいい気がした。それだけです。
映像が残っているのは、2015年の年末からです。もう10年になります。
そして、いちばん最初に残っていた映像が何だったかというと——ネコが道を横切っただけの映像でした。
事故ではありません。危険でもありません。ただ、ネコが横切った。それだけです。
続く3本は、年が明けた元日に撮ったものでした。除雪車とすれ違ったところ、道の駅、そして合格祈願に行った日の渋滞。
最初の4本に、事故は一本もありませんでした。
今にして思えば、この10年がどうなるかは、最初の4本が、すでに言い当てていたのかもしれません。
その10年で撮れた映像のうち、「これは残しておこう」と名前を付けて保存したものが、28本あります。先日あらためて数えてみて、少し驚きました。
28本のうち15本は、事故でも危険でもありませんでした。
残っていたのは、こんな映像です
危ない場面は、たしかにあります。13本。
強風で飛んできた看板、追突、正面衝突、赤信号無視、逆走が2回、そして「危ない」としか名前の付けようがなかったものが3本。
残りの15本は、こうです。
- ネコが横切る(3回)
- キジ(2回)
- 猿
- クラシックカー(2回)
- ランボルギーニ
- 土煙
- 1年生
- 除雪車とすれ違う
- 道の駅
- 合格祈願の日の渋滞
- 名前を付けそこねた1本(「?」としか書いていません)
キジと猿が出てくるあたり、いかにも田舎の道です。クラシックカーとランボルギーニは、まあ、昔から車が好きなもので、つい残してしまいました。
ちなみにネコは、10年で3回横切っています。いちばん最初の1本も、ネコでした。
そして最後の1本が、いちばん見返しているものです。
赤信号で止まっていたら、1年生が振り向いた
2018年5月の映像です。
交差点の信号が赤で、私は停止線で止まっていました。何ということもない、いつもの道です。
横断歩道を、小学生が2人渡っていきました。たぶん1年生です。ランドセルが、体に対して大きすぎる。黄色い交通安全のカバーがかかっていて、それがまた大きく見えました。
渡り終えたところで、2人がくるりと振り向きました。
そして、渡ってきた横断歩道に向かって、お辞儀をしました。
私の車に、ではありません。横断歩道に、です。

学校で教わったのだと思います。教わったとおりに、律儀にやっている。誰かに見せるためでもなく、ただ、そうするものだと思ってやっている。その様子が、なんとも言えませんでした。
信号が青に変わるまでの、ほんの数秒です。それでも、その日は一日、気分が良かった。
ドライブレコーダーは、事故を撮るために付けました。こういうものが撮れるとは、思っていませんでした。
助かったのは、ゆっくり走っていたからでした
もちろん、怖い思いもしています。
2017年2月、強風で看板が飛んできました。私の車の直前まで飛んできて、ぶつかる寸前でした。
ぶつからずに済んだ理由は、運が良かったからではありません。ゆっくり走っていたからです。だから、直前で止まることができました。もし急いでいたら、間に合わなかったと思います。
もう一本、よく通る道で撮ったものがあります。
ラジコン飛行機の飛行場へ向かう途中でした。反対車線の物陰に、パトライトを付けたマイクロバスが停まっているのが見えました。その少し先で、ネズミ捕りをやっていたのです。
私は、止められませんでした。
ただ、これは自慢できる話ではありません。取り締まっていたのは反対車線で、私はそもそも対象外でした。もっとも、法定速度で走っていましたが。
60代になって、運転で変わったことがあるとすれば、これだと思います。若い頃のように飛ばさなくなった。急がなくなった。体力が落ちたからでもありますが、急いだところで、たいして早くは着かないと分かったからでもあります。
ドライブレコーダーは、その判断が正しかったことを、映像で見せてくれました。
事故でも事件でもない、ただの記録
もう一つ、気に入っている映像があります。
2021年の春先、風で土煙がものすごく上がった日のものです。畑の土が舞い上がって、向こうの景色が見えなくなるほどでした。
事故でもなければ、事件でもありません。ただ、そこにあった風景です。

写真を撮ろうと思って撮ったものではありません。走っていたら、勝手に残っていた。ドライブレコーダーの、思いがけない使い道だと思います。
機材の話:最初は2千円台のもので十分でした
実は、専用のドライブレコーダーを買う前に、一度こんなことを試しています。
使わなくなった古いiPhoneを、ホルダーでフロントウィンドウに取り付けて、ドラレコのアプリで撮ってみたのです。手持ちのもので済むなら、それがいちばんだと思いました。
結果は、失敗でした。
途中でiPhoneが熱くなって、勝手にシャットダウンしてしまうのです。フロントウィンドウは、日が当たれば相当な温度になります。肝心なときに止まっていては、意味がありません。
やってみて分かりました。専用のドライブレコーダーは、熱くなる前提で設計されている。そこが違うのだと思います。
ですから、「手持ちのスマホで代用できないか」は、おすすめしません。私は試したうえで、そう言います。
とはいえ、高いものを買わなければ意味がない、ということもありません。
あとで購入履歴を調べたら、私が最初に付けたのは2012年で、値段は約2,300円でした。2台目も7,366円です。
ここまでに書いた映像は、その2台で撮れています。ネコも、看板も、1年生も、キジも。どちらも1万円しないドラレコが残してくれました。
14年で6台つけて分かったことは、別の記事にまとめました。
▶ 【14年で6台つけました】ドラレコは高いものを買うべきか|7,366円が10年撮り続けた話
今は、メーカー純正のものを、新車のときから付けています。こちらは、
- 前・後ろ・車内を同時に撮影
- GPS付きで、走った場所も記録される
- カーナビの画面ですぐ再生できる
さすがに、よくできています。特に後ろが撮れるのは大きい。あおり運転が話題になってから、後方の記録は意味を持つようになりました。
ただ、「まず付けてみる」なら、安いもので十分です。付いていないより、はるかにいい。
60代こそ、付けたほうがいいと思う理由
免許の返納が話題になる年代です。私自身、いつかは考えることになると思います。
それでも、まだ運転を続けるつもりなら、ドライブレコーダーは付けたほうがいいです。理由は3つあります。
一つ目は、証拠が残ること。これは当たり前の理由です。
二つ目は、自分の運転が見えること。あとから見返すと、自分がどれだけ雑な合流をしていたか、意外と分かります。人に指摘されるより、よほど効きます。
三つ目は、こちらのほうが大事かもしれません。家族が安心します。「何かあっても記録が残っている」というだけで、送り出す側の気持ちは違うものです。
それでも、事故の映像は公開しません
この記事に、事故の映像は載せていません。
他人の車のナンバーが写っているからです。事故の相手や、逆走してきた車を公開するのは、たとえ向こうに非があっても、私のやることではないと思っています。
ただ、1年生の一枚だけは載せました。顔はまったく写っていません。二人とも前に屈んでいて、見えているのはランドセルの上だけです。8年前のことでもあります。
あの数秒は、誰かに迷惑をかけるものではないと思いました。事故の映像とは、話が別です。
noteのほうに、あの数秒のことだけを書きました。
私にではなく、横断歩道に
まとめ
- ドライブレコーダーは事故のために付けた。10年で名前を付けて残した28本のうち、15本は事故でも危険でもなかった
- いちばん見返したのは、1年生が振り向いてお辞儀をした数秒
- 飛んできた看板をよけられたのは、ゆっくり走っていたから。だから直前で止まれた
- 最初は2千円台のもので十分。付いていないより、はるかにいい
- 60代が付ける理由は3つ。証拠・自分の運転を見直せる・家族が安心する
- ただし、映像を人に見せるかどうかは、別の話
事故に備えて付けたものが、思いがけないものを残してくれることがあります。
あの2人は、もう中学3年生になっている頃でしょうか。


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