【何も買わずに20分】散歩の帰りに、同級生の酒屋でだべる

夕暮れの空の下、暖かい灯りがこぼれる昔ながらの町の酒屋。ビールケースとのれん、自販機、自転車が見える 暮らし

昨日の午前、散歩の帰りに、同級生がやっている酒屋に寄ってきました。20分か、30分か。とりとめのない話をして、帰ってきただけです。

それだけの話なのですが、退職してから、この時間がずいぶん大事になったと感じています。今日は、そんな話を書きます。

中学・高校の同級生がやっている、昔ながらの酒屋

その店は、先代から続く、昔ながらの酒屋です。お酒だけでなく、ちょっとした日用品や食べ物も置いてあって、コンビニのような使われ方もしています。

やっているのは、中学・高校で一緒だった同級生です。彼も最初は会社勤めをしていました。それを辞めて、実家のこの店を継いだのです。

正直に告白します。何も買っていません

ここで、白状しなければならないことがあります。

私は、何も買っていません。

言い訳をさせてもらうと、散歩の途中だからです。歩きなので、荷物を持って帰れない。だから手ぶらで寄って、しゃべって、手ぶらで帰る。……こう書くと、ずいぶん厚かましい客です。

友よ、すまない。今度は車で行って、ビールでも買います。

話すことは、たいしたことではない

何を話しているかというと、これがまた、たわいもないことばかりです。

  • 世間話
  • 健康の話(この年になると、これが増えます)
  • 今度の飲み会をどうするか

先日は、こんな話もしました。近所の道路の下で、下水道の工事をやっているのですが、その工事を落札したのが、私の妻の勤め先だったのです。散歩でその前を通ったら、ちょうど工事現場から、その会社の社長が出てきました。

「いや、あれ、うちのカミさんの会社なんだよ」——そんな話をして、二人で笑う。ただそれだけのことです。

20〜30分で、切り上げる

ひとつ、自分なりに気をつけていることがあります。

長居はしません。だいたい20分から30分。そして、お客さんが来たり、業者さんが来たりしたら、すぐに切り上げて帰ります。

向こうは仕事中なのです。こちらは暇な身ですが、相手はそうではない。この距離感を守ることが、こういう場所と長く付き合うコツだと思っています。

現役の頃は、こうではなかった

思い返すと、現役時代は、この店にほとんど行っていませんでした。

行くとすれば、仕事が終わったあとの夜、父のタバコを買いに走るくらい。用事があるから行く、それだけの場所でした。しゃべる余裕などありません。

それが今は、いつでも行けます。平日の午前中、散歩のついでに、ふらりと。この「いつでも行ける」というのが、退職して手に入れた、思いがけない贅沢でした。

なぜ、ホッとするのか

あの店に寄ると、はっきりとホッとします。その理由を考えてみて、思い当たったことがあります。

正直に書きます。私は、日中ずっとAIとしか話していない日があるのです。

今はこうしてブログを書いていますが、その相棒はAIです。調べ物もAI、相談もAI。便利だし、実際たいへん助かっています。でも——気づくと、その日いちども人間と口をきいていない。そういう日が、たしかにあるのです。

だから、酒屋の彼と20分だべるだけで、ずいぶん気持ちが晴れます。用件のない会話。オチもなく、結論もなく、ただ交わすだけの言葉。あれは、思っていたよりずっと大事なものでした。

ほかにもある、私の”立ち寄れる場所”

そう考えると、私にはいくつか、こういう場所があります。

40年通っている床屋

もう40年です。何も言わなくても「いつもどおり」で済む。そして先日、私に「大人の休日倶楽部」を勧めてくれたのも、この床屋さんでした(その話はこちらの記事に書きました)。人生の情報は、案外こういうところから入ってきます。

週末のラジコンクラブ(こちらは45年もの)

これは趣味の話ですが、片手間ではありません。ラジコン歴は、45年以上になります。コンピューターを始めたのと、ほぼ同じ年数です。

所属しているのは、専用の飛行場を持つクラブです。歴史も古く、日本選手権の会場になったこともあり、地区の予選会場にもなっています。週末はここへ行って、飛行機やヘリコプターを飛ばしています。

山に囲まれた広大な芝生のラジコン専用飛行場。大会のためのテントやのぼり旗、白線のサークルが見える
大会のときの飛行場。山に囲まれた、この広さです。

ただ、飛ばしているだけではありません。飛行場は、自分たちで維持しています。

  • 毎週の草刈りと、除草剤撒き
  • 年に数回の飛行場整備

そして、こんなこともあります。誰かの機体が墜落すると、全員で捜索に向かうのです。運よく滑走路の中に落ちてくれればいいのですが、たいていは藪の中。みんなで草をかき分けて、探し回ります。

芝生に並んだラジコン飛行機4機。第二次大戦機や小型ジェット機など、精巧な機体
出番を待つ機体たち。これを飛ばすのですから、落としたときのショックも大きいわけです。

そう、ここが意外なところで——飛行場を歩き回るだけで、けっこうな運動になります。とにかく広いのです。ラジコンは座ってやる趣味だと思われがちですが、実際はよく歩き、よく体を使います。

広い空の下、自然のなかで、同じものが好きな仲間と過ごす。うまく飛べば一緒に喜び、落とせば一緒に藪へ入る。これ以上の気晴らしは、なかなかありません。

……とはいえ、正直に書けば、この猛暑ではさすがに足が遠のいています。涼しくなったら、また行きます。

スナック、そしてオンラインのコミュニティ

行きつけのスナックもあります。それから、リベシティというオンラインのコミュニティにも入っています(サブスクの記事で触れました)。こちらは画面越しですが、学び合う仲間がいるのは、やはりありがたいものです。

まとめ:退職して失うのは、収入だけではない

退職すると、収入が減ります。それは覚悟していました。

でも、実際に辞めてみて気づいたのは、減るのはお金だけではないということです。毎日、当たり前のように誰かと話していた時間が、そっくりなくなるのです。会社というのは、給料をくれる場所であると同時に、話し相手をくれる場所でもありました。

だから、これから退職される方にお伝えしたいのは、これです。

「用もないのに立ち寄れる場所」を、いくつか持っておいてください。

酒屋でも、床屋でも、喫茶店でも、趣味の集まりでもいい。何かを買う必要すらありません(買ったほうがいいですが)。ただ寄って、20分だべって、帰ってこられる場所。それが、退職後の暮らしを、思いのほか支えてくれます。

——というわけで、次は車で行って、ちゃんとビールを買ってきます。

今日が人生で一番若い日です。ぜひ、今日から一歩踏み出しましょう。

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