【1円合わないと、必ず確認します】認知症の母のお金を預かるということ

母の生活費を記録した3冊のノート。2023年8月から現在まで、期間が手書きされている お金の悩み

2023年8月23日。私の手元の記録は、この日から始まっています。

両親がそろって認知症と診断された頃でした。父はまだ存命でしたが、二人とも、もう自分たちでお金の管理はできない。そこから、母のお金は私が預かることになりました。

あれから3年。今日は、実際に私が何をしてきたかを、正直に書きます。同じ立場になる方は、これからきっと増えるはずですから。

最初の仕事は、”探すこと”でした

いざ引き継ぐとなって、最初に何をしたか。家じゅうの捜索です。

現金、通帳、キャッシュカード、印鑑、保険証——。これらが、どこにあるか分からない。認知症とは、そういうことなのです。本人がしまった場所を、本人が忘れてしまう。だから、必要になるたびに、また探すことになります。

引き出しを開け、押し入れを探り、箱をひっくり返す。それでも見つからないものは、あきらめて再発行の手続きをしました。銀行へ行き、事情を説明し、書類を書く。それだけで何日もかかります。

思うのは、これを「元気なうちに」聞いておけたら、どれだけ楽だったかということです。通帳がどこにあるか。印鑑はどれか。それを聞くだけで、何十時間も節約できたはずでした。

固定費を洗い直したら、黒字になりました

お金を預かって、まずやったのは家計の全体像を把握することでした。何にいくら払っているのか。そして、そこには”削れるもの”がいくつも眠っていました。

① プロパンガスが、半額以下になった

いちばん驚いたのが、プロパンガスです。明らかに高い。調べてみると、これがなかなかの世界でした。

プロパンガスは自由料金で、1月の明細に、しれっと値上げが書かれていることがあります。気づかなければ、そのまま払い続けることになる。正直、「無法地帯」と言いたくなるような状態でした。

そこで私が使ったのが、「ガス屋の窓口」というプロパンガス料金の相談サイトです。名前だけ聞くと少し身構えるかもしれませんが、とても親切に対応していただけました。今の料金を伝えると、適正な会社を紹介してくれる、という仕組みです。

ひとつだけ手間があるとすれば、切替工事に立ち会いが必要なことでした。私はまだ働いていた頃だったので、テレワークの日に合わせて日程を調整して乗り切りました。

そして結果は——料金が半分以下になりました。使う量は、何も変えていません。ただ、契約を見直しただけです。

もし親御さんの家がプロパンガスなら、一度、明細を見てあげてください。ここは、いちばん効きます。

② 使っていない固定電話を解約

もう誰も使っていない固定電話がありました。かかってくるのは営業電話ばかり。解約しました。

③ 携帯電話を、安いものに

高い料金プランのままだったので、必要十分な安いものに変更しました。

④ 保険と、水道料金の見直し

保険は火災保険だけでしたが、これも内容を見直しました。さらに下水道料金も見直しています(この話はこちらの記事にも書きました)。

こうして固定費を削り、さらに父が亡くなってからはたばこ代と酒代がなくなったこともあって、母の家計は黒字になりました。

遺族年金の手続きで、分かったこと

父が亡くなったあとの遺族年金の手続きも、私が行いました。

日本年金機構の「年金相談等にお越しになったお客様へ」という案内書
年金事務所でいただいた案内。手続きは予約制です。

予約は、日時を決めてから電話する

まず、近くの年金事務所に電話します。するとコールセンターにつながり、そこで来訪の予約をとる形でした。

ここで、ひとつ実用的な注意点です。予約したあとで日時を変更しようと電話すると、また別の担当者につながります。「さっき話したのに……」となるわけです。

もっとも、引き継ぎはきちんとされているので実害はありません。それでも二度手間になるので、電話する前に、行ける日時をしっかり決めておくことをおすすめします。

必要な書類(未支給年金・遺族年金の場合)

年金事務所でもらった案内に、必要書類が載っていました。私の場合、用意したのはこれだけあります。

年金事務所でもらった「未支給年金のお手続きについて」の案内。必要書類が一覧になっている
「未支給年金のお手続きについて」の案内。必要書類が一覧になっています。
  1. 母(請求者)の戸籍謄本
  2. 父の死亡後の戸籍(死亡の記載があるもの)
  3. 請求者の普通預金通帳
  4. 亡くなった人の年金証書、またはマイナンバーカード
  5. 委任状(母の代わりに私が手続きするため)
  6. 私の本人確認書類(運転免許証など)
  7. 死亡診断書のコピー
  8. 母の年金手帳、または年金証書

ポイントは⑤の委任状です。本人以外が手続きする場合は、これがないと始まりません。認知症の親に代わって動く以上、避けて通れない書類です。

遺族厚生年金の試算結果の書類(個人情報は伏せています)
手続き後にもらった試算結果(個人情報は伏せています)。こうして正式に受け取れるようになりました。

※必要書類は、状況やお住まいの地域によって変わることがあります。必ず年金事務所でご確認ください。

そして毎月——現金と、ノートの日々

ここからが、いちばん地味で、いちばん手間のかかる話です。

私は母の口座からお金を引き出し、そこから生活費を出しています。そして、その1円単位まで、すべてノートに記録しています。

母の生活費を記録した3冊のノート。2023年8月から現在まで、期間が手書きされている
左から1冊目(2023年8月〜)、2冊目、そして現在使っている3冊目。

1冊目は手帳を使いました。ところがレシートを貼っていくと、どんどん分厚くなる。写真の左端、はち切れそうになっているのが分かるでしょうか。そこで2冊目からは、B5サイズのノートに変えました。今は3冊目です。

やっていることは、単純です。買い物のレシートを糊で貼り、金額を書き、手元の現金残高を計算する。電卓とスティック糊が手放せません。

正直に言えば——キャッシュレスなら、店で「ピッ」と鳴らして終わりなのに、と何度思ったことか。私自身はほとんどキャッシュレスで暮らしているので、この現金管理は、かなりの負担に感じます。

それでも、やめません。理由は次に書きます。

1円合わないと、必ず確認します

私は、1円でも合わないと、必ず原因を探します。レシートを見返し、記憶をたどり、どこで間違えたかを突き止める。

神経質だと思われるかもしれません。でも、これは他人のお金だからです。たとえ親子でも、母のお金は母のもの。預かっている以上、いい加減にはできません。

そしてもうひとつ、私が徹底していることがあります。

自分のおごりと、母の生活費は、きっちり分ける

ときどき、母を連れて食事に行きます。それは私のおごりです。母のお金からは出しません。

なぜ分けるのか。理由は、自分の心のためです。

もし普段の生活費まで私が出すようになったら、いつか——「生活費も俺が出したのに」という気持ちが、自分の中に湧いてくるかもしれない。そういう感情が生まれるのが、私はイヤなのです。

だから、線を引く。母の生活費は母のお金から、私が贈りたいものは私のお金から。この区別をきっちりしておくことが、結果的に、気持ちよく介護を続けるコツだと思っています。

正直な、本音も書いておきます

弟がいます。お金のことも介護のことも、きちんと説明はしています。隠すつもりはまったくありません。

ただ——正直なところを書けば、お金の管理も介護も、実際に動いているのは私だけです。「少しは手伝ってほしい」という気持ちが、まったくないと言えば嘘になります。

それでも、やる人がやるしかない。そういうものだと思っています。だからせめて、記録だけはきちんと残す。後ろ暗いところは何もない、と自分でも家族にも言えるように。あのノートは、そのためのものでもあります。

まとめ:元気なうちに、聞いておいてください

3年やってきて、いちばん伝えたいことは、これです。

  • 親が元気なうちに「どこに何があるか」を聞いておく(通帳・印鑑・保険証。これだけで何十時間も変わります)
  • 固定費は必ず見直す(特にプロパンガス。半額になることもあります)
  • 年金事務所は予約制。日時を決めてから電話する
  • 記録は、面倒でも残す(自分を守ることにもなります)
  • 親のお金と自分のお金は、きっちり分ける

親のお金を預かるのは、気の重い作業です。でも、いつか誰かがやることになります。だとしたら、少しでも早く、少しでも元気なうちに。

今日が人生で一番若い日です。ぜひ、今日から一歩踏み出しましょう。

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