【私がいなくなったら、永久に表に出ない】パスワードの金庫を、紙1枚で開けられるようにした

「私がいなくなったら、永久に表に出ることはない」という言葉を白地に大きく置いたアイキャッチ ITの悩み

7月に、こんな記事を書きました。父を見送ったあとの手続きが謎解きのようだった、という話です。そのとき私は、記事の最後にこう書きました。

「まずは、印刷することから始めます」

パスワードは1Passwordというアプリで185件を管理しています。そのEmergency Kit(緊急キット)を、クラウドから紙に出す。そう自分に言い聞かせて、記事を終えました。

1PasswordのEmergency Kitとは、アカウントへのサインインに必要な情報をまとめた重要なPDFファイルです。

やりました。今日は、その報告です。

きっかけは、フォルダの中にありました

8月9日、パソコンの中を整理していました。

そのとき気づいたのです。Emergency Kitが、OneDrive(Microsoftのクラウドサービス)上のフォルダに入っている。

パスワードを守るための鍵が、パスワードが無いと開けない場所にしまってある。それを見て、思いました。

私がいなくなったら、これは永久に表に出ることはない。

すぐに印刷しました。

金庫の鍵が、金庫の中に入っていました

7月の記事にも、少し書きました。あらためて、順に並べてみます。

私のパスワードは185件、すべて1Passwordの中にあります。金庫のようなものです。

その金庫を家族が開けるための紙が、Emergency Kitです。私はそれをOneDriveに置いていました。紙は紛失や盗難のリスクがあると考えていたからです。

ところが、そのOneDriveに入るには、Microsoftアカウントのパスワードが要ります。そのパスワードは、どこにあるか。1Passwordの中です。

言葉にすると、間の抜けた話です。でも、こういう形になっている方は、少なくないと思います。便利にするために1か所へ集めたら、それを開けるための鍵まで、その中に入ってしまった——そういうことです。

1PasswordのEmergency Kitの見本。サインインアドレス、メールアドレス、シークレットキー、アカウントパスワードの欄と、セットアップ用のQRコードが並んでいる
Emergency Kitに書かれていること。1Passwordが公開している見本で、値はすべて架空のものです(1Password社の許可を得て掲載)

紙は、2枚にしました

印刷して、ここで少し考えました。1枚では足りない、と気づいたからです。

目的が2つあったのです。

中身 いつ使うか
家族用 マスターパスワード入り 私がいなくなったあと
自分用 マスターパスワードは空欄 機械を全部なくしたとき

家族用は、封筒に入れて封をしました。開ければ、それだけで金庫が開きます。

自分用は、マスターパスワードを書きません。私は毎日それを打っているので、覚えているからです。

置き場所を、妻に伝えました

7月の記事に、私はこう書いていました。

そして何より——妻は、その存在を知りません

材料は作ったのに、渡していない。金庫を用意して、鍵の場所を誰にも教えていない状態でした。

封筒を作ったあと、妻に伝えました。

少し驚いた表情をしていましたが、分かったようです。

それだけです。長い説明はしていません。「これがどこにあるか」を言っただけです。でも、7月の記事に書いた宿題は、これで一つ片づきました。

いま考えると、1枚でよかったかもしれません

ここまで書いてきて、気づいたことがあります。

自分用の1枚は、要らなかったかもしれません。

自分用は「機械を全部なくしたとき」のつもりで作りました。ですが、そういう場面でも、妻あての封筒を開ければ済みます。あの中には、マスターパスワードまで入っているのですから。

そもそも、私自身がこの紙を使う場面は、ほとんど考えられません。

パソコンが壊れても、iPhoneで1Passwordが使えます。iPhoneが壊れても、パソコンで使えます。マスターパスワードは毎日打っているので、覚えています。パソコンとiPhoneが同時に使えなくなる——そういう事態は、かなり特殊です。

つまり、この紙は、私のためのものではありませんでした。

一生、使わないと思います。私が死んだあと、家族が使います。

そう考えると、必要なのは封筒に入れた1枚だけだったことになります。

前に書いたことを、訂正します

もう一つ、片づけておきたいことがあります。

1Passwordについて書いた記事に、私はこう書いていました。

ただ私の場合は、紙は紛失や盗難のリスクがあると考え、別の安全な形で保管しています

いまは、そうしていません。紙にしました。

あのときは本心でそう考えていました。紙は失くすし、盗まれる。クラウドのほうが安全だ、と。その「別の安全な形」が、金庫の中だったのです。

該当の記事は、いまの形に直しておきます。

残っているのは、一覧です

7月の記事には、宿題を3つ書きました。印刷すること。置き場所を家族に伝えること。そして「どこに何があるか」の一覧を作ることです。

3つ目は、まだやっていません。

ただ、材料はもう手元にあります。

  • 銀行は、楽天ひとつです
  • カードは、1Passwordの中の「クレジットカード」を見れば分かります
  • サブスクは、一覧表を作ってあります

それらを印刷して、まとめておくだけです。

もう一つ、これからやろうと思っていることがあります。Emergency Kitを、1年に1回くらい見直すことです。マスターパスワードを変えれば、紙の中身も変わります。作って置いたまま何年も忘れている、というのが、いちばんありそうなことですから。

7月に「印刷することから始めます」と書いて、実際に手をつけるまで2週間かかりました。印刷そのものは5分でした。時間がかかったのは、手を動かすまでの部分です。自分がいなくなった時のことを想像するのは、気が重いのです。

パスワードの金庫を紙1枚で開けられるようにしたのと、同じ考え方が証券口座にも要ります。パスキーを登録したパソコンが壊れると、そのままでは口座に入れなくなります。その戻り道を調べた話は、こちらに書きました。→ SBIは紙、楽天は電話。パスキーが使えなくなった時の復旧方法

もう一つ、Emergency Kitとは別に用意しておくものがあります。復元コードです。これは自分で作らないかぎり存在しません。作り方と、マスターパスワードを忘れてしまった後でも間に合う条件は、こちらに書きました。→ 1Passwordのマスターパスワードを忘れたら|復元コードが無くても、まだ開く端末はありませんか

1Passwordには、危ないパスワードを教えてくれるウォッチタワーという画面もあります。その警告を片づけたときの話は、こちらです。直せないものもありました。【漏れたら、何を失いますか】パスワードの警告に、優先順位をつけた日

今日が人生で一番若い日です。ぜひ、今日から一歩踏み出しましょう。

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